長期積立は本当に報われるのか — 過去データで見る「何年持てば負けにくくなるか」
「インデックスを長期で積み立てれば大丈夫」と言われても、実際に暴落のさなかにいると、本当に続けてよいのか不安になります。
この記事では、過去のデータから「長期で続けてきた人は、どのような結果になったか」を整理します。
ただし、これは将来を保証する話ではありません。あくまで、暴落時に投げ売りせず、冷静に続けるための判断材料として見るものです。
なぜ「過去データ」を見るのか
長期投資の話では、「歴史的に株式は右肩上がりだった」と説明されることがあります。
ただ、これだけでは抽象的です。
暴落の真っ最中にいると、
- 「今回は違うのでは」
- 「このまま下がり続けるのでは」
- 「いったん売った方がよいのでは」
と考えたくなります。
そこで役に立つのが、「過去に何年くらい保有すると、マイナスで終わる期間がどれくらい減ったのか」という見方です。
もちろん、過去と未来は同じではありません。
それでも、短期では大きく下がることがあっても、保有期間が長くなるほどマイナスで終わる確率が下がってきた、という過去の傾向を知っておくことには意味があります。
S&P500の「保有期間別リターン」をざっくり見る
代表例として、米国株の主要指数であるS&P500を見てみます。
ここでいうS&P500の過去データは、主に次の前提です。
- 配当再投資込み
- 名目リターン
- 米ドルベース
- 税金、為替、投資信託の信託報酬などは考慮しない
この前提で、過去の保有期間別リターンを大まかに見ると、傾向は次のようになります。
| 保有期間 | 過去データのざっくりした傾向 |
|---|---|
| 1年保有 | プラスの年もマイナスの年もある。1年だけで見るとリターンは大きくぶれる |
| 5年保有 | 1年よりは結果がならされるが、それでもマイナスで終わる期間はある。ITバブル崩壊やリーマンショックを含む時期では5年持っても報われないケースがあった |
| 10年保有 | マイナスで終わる期間はかなり減る。ただし2000年前後の高値圏から投資を始めた場合など、10年でも厳しい期間はあった |
| 15年保有 | マイナスで終わる期間はさらに少なくなる。多くの検証では、15年程度まで保有期間を延ばすと、名目・配当再投資込みではかなり安定しやすい |
| 20年保有 | 1928年以降のS&P500の年次データを使った検証では、20年保有では名目・配当再投資込みで、マイナスで終わった期間は見られない |
ただし、ここで大事なのは「条件つきの過去データ」だという点です。
ここでいう「条件つき」とは、さきほど挙げた「配当再投資込み・名目・米ドルベースで、税金や為替、手数料は考慮しない」という前提のうえで成り立つ数字だ、という意味です。前提が一つでも変われば、見える結果も変わります。
過去にそうだったというだけで、これからの20年も同じ結果になると約束されているわけではありません。
インフレを差し引いた実質リターン、円換算後のリターン、税金や信託報酬を差し引いたリターン、毎月積立でのリターンは、それぞれ結果が変わります。
リーマンショック直前に買った人はどうなったか
長期投資の不安を考えるうえで、よく例に出されるのがリーマンショックです。
S&P500の価格指数で見ると、リーマンショック前後の主な数字は次の通りです。
| 時点 | 終値 | 意味 |
|---|---|---|
| 2007年10月9日 | 1,565.15 | 暴落前の高値 |
| 2009年3月9日 | 676.53 | 金融危機後の安値 |
| 2013年3月28日 | 1,569.19 | 終値で高値を上回った日 |
終値ベースで見ると、2007年10月の高値から2009年3月の安値まで、約57%下落しました。
そして、2007年10月の高値を終値で上回ったのは2013年3月です。
つまり、暴落直前の高値で一括購入していた場合、価格指数だけで見ると、元の水準に戻るまで約5年半かかったことになります。
これはかなり長く感じる期間です。
ただし、毎月一定額を積み立てていた場合は、話が少し変わります。
積立投資では、暴落中も買い続けるため、価格が下がった時期に多くの口数を買うことになります。そのため、相場が回復したときには、一括購入より早く評価額が回復しやすいです。
ただし、これも積立額、開始時期、購入頻度、投資対象によって変わります。
「積立なら必ず早く回復する」と断定するのではなく、「下落局面で買い続ける仕組みがあるため、一括投資とは違う結果になり得る」と考えると良いです。
注意点1:為替の影響
日本の投資家がS&P500に投資する場合、円をドルに変えて投資し、売却時はドルを円にします。
そのため、米ドルベースのS&P500が上がっていても、円高になると円換算後のリターンが目減りすることがあります。
逆に、円安になると、ドル建てのリターンに為替差益が上乗せされることがあります。
つまり、日本の投資家にとっては、
- S&P500自体の値動き
- ドル円相場
- 投資信託の信託報酬
- 税金
- 為替ヘッジの有無
などが、実際のリターンに影響します。
米国の過去データだけを見て、「自分の円ベースの投資結果も同じになる」と考えるのは危険です。為替リスクの整理は S&P500に円で投資するということ — 為替リスクの基本と考え方 も参考にしてください。
注意点2:インフレ調整後の実質リターン
「長期でマイナスになりにくい」という話は、多くの場合、名目リターンの話です。
名目リターンとは、物価上昇を差し引く前のリターンです。
たとえば、資産が10%増えても、その間に物価が10%上がっていれば、購買力は増えていません。
長期投資で本当に大事なのは、単に金額が増えることだけではありません。
将来、そのお金でどれだけのモノやサービスを買えるか、つまり実質的な購買力を守れるかどうかも重要です。
インフレが高い時期には、名目ではプラスでも、実質では思ったほど増えていないことがあります。
注意点3:日本株はS&P500と同じではない
S&P500のデータを見て、「株式ならどの国でも長期で同じように報われる」と考えるのは危険です。
たとえば、日経平均株価は1989年12月29日に終値38,915円87銭をつけました。
その後、長い低迷期が続き、終値ベースでこの水準を上回ったのは2024年2月22日です。終値は39,098円68銭で、約34年2カ月ぶりの最高値更新でした。
この例から分かるように、投資する国・指数・通貨・時期によって、長期投資の結果は大きく変わります。
ただし、ここでも注意が必要です。
日経平均株価としてニュースでよく見る数字は、基本的に配当を含まない価格指数です。
一方で、配当を再投資した場合の成績を見るには、受け取った配当でさらに買い増したと仮定して計算しなおした「配当込み指数」を見る必要があります。日経平均にもこうした指数があり、日経平均トータルリターン・インデックスと呼ばれます。
配当込みで見ると、単なる価格指数とは結果が変わります。
つまり、日本株についても、
- 「日経平均は長く戻らなかった」
- 「配当込みなら見え方が変わる」
- 「それでもS&P500と同じ前提では語れない」
という3点を分けて考えることが大切です。
注意点4:過去の実績は将来を保証しない
最後に、もっとも大事な前提です。
過去に長期投資が報われやすかったとしても、それが将来も同じように続くとは限りません。
特に、ひとつの国、ひとつの指数、ひとつのテーマに資産を集中させると、その前提が崩れたときに大きな影響を受けます。
過去データは、将来を予言するものではありません。
使い方としては、
- 「過去にはこういう傾向があった」
- 「短期では大きく下がっても、長期では回復してきた例が多かった」
- 「だから暴落時に感情だけで売らない材料にする」
くらいがちょうどよいです。
それでも長期積立を続ける意味
ここまで注意点を挙げても、長期積立には意味があります。
理由は、次の通りです。
- 短期の値動きを当てるのは、プロでも難しい
- 下落時に売ると、その後の急回復を取り逃すことがある
- 積立を続けると、下落時にも機械的に買い続けられる
- 投資時期を一度に集中させずに済む
- 広く分散すれば、特定の銘柄や地域への依存を下げやすい
長期積立の目的は、「必ず勝つこと」ではありません。
目的は、短期の値動きに振り回されすぎず、長い時間をかけて資産形成を続けることです。
特に、全世界株式や米国株式などの低コストインデックスファンドに毎月積み立てる方法は、投資タイミングを完璧に当てる必要がない点で、長く続けやすい方法です。
ただし、続けるためには、自分に合ったリスク量にしておくことが重要です。
自分が許容できる金額を超えて投資した場合、暴落時に怖くなって売ってしまいます。そもそもの目的である長期投資での資産形成を続けられる金額にしましょう。
生活防衛資金を確保したうえで、無理のない金額を積み立てることが大切です。暴落時の心構えは 暴落時の心構え — 売らずに続けるための考え方 もあわせてご覧ください。
まとめ
S&P500の過去データでは、保有期間が長くなるほど、マイナスで終わる期間は少なくなります。
特に、配当再投資込み・名目・米ドルベースのデータでは、15年から20年程度の長期保有になると、検証条件によって差はあるものの、マイナスで終わる期間はかなり少なくなります。
ただし、これは「将来も必ずそうなる」という意味ではありません。
日本の投資家が実際に投資する場合は、
- 為替
- インフレ
- 税金
- 信託報酬
- 投資する指数
- 分配金の扱い
- 一括投資か積立投資か
によって結果が変わります。
過去データを、暴落時に冷静さを保つための材料として使い、暴落時も売却せず積み立てを続けることが大切です。
長期積立は、短期で必ず報われる方法ではありません。
しかし、無理のない金額で、低コスト・分散・長期を意識して続けることで、資産形成の成功確率を高めるための現実的な方法になり得ます。
※ 数値や指数の仕様は、各指数提供元や運用会社の公式情報でご確認ください。本記事は投資の助言ではありません。
よくある質問
- Q1. S&P500は何年持てばマイナスにならなくなりますか?
- 「絶対にマイナスにならない年数」は存在しません。ただし、1928年以降のS&P500の年次データを配当再投資込み・名目・米ドルベースで見た検証では、保有期間が長くなるほどマイナスで終わる期間は少なくなる傾向があり、15〜20年程度の保有では、過去データ上マイナスで終わった期間はごくわずかでした。これはあくまで過去の傾向であって、将来も同じ結果になることを保証するものではありません。また、円換算・実質リターン(インフレ調整後)・税金・信託報酬を考えると、結果は変わります。
- Q2. リーマンショック直前にS&P500を一括で買った人は、何年で元に戻りましたか?
- 価格指数の終値ベースで見ると、暴落前の高値である2007年10月9日の終値1,565.15を、2013年3月28日の終値1,569.19が初めて上回りました。つまり、価格指数だけで見ると、元の水準に戻るまで約5年半かかったことになります。なお、2007年10月の高値から2009年3月9日の安値676.53までは、終値ベースで約57%下落しました。配当再投資込み・円換算・税引き後など、見る指標によって回復までの体感期間は変わります。
- Q3. 日本株(日経平均)でも同じように長期で報われましたか?
- 日経平均株価は1989年12月29日に終値38,915円87銭をつけ、その後長い低迷期が続きました。終値ベースでこの水準を上回ったのは2024年2月22日(終値39,098円68銭)で、約34年2カ月ぶりの最高値更新でした。ただし、日経平均はニュースでよく使われる価格指数で、配当を再投資した場合の成績を見るには日経平均トータルリターン・インデックスのような配当込み指数を参照する必要があります。投資する国・指数・通貨・時期によって、長期投資の結果は大きく変わります。
- Q4. 為替の影響はどれくらいありますか?
- 日本の投資家がS&P500に円で投資する場合、米ドルベースの値動きに加えて、ドル円の為替レートが円換算後のリターンに影響します。同じ米ドル建てのリターンでも、円高が進めば円換算では目減りし、円安が進めば上乗せされる方向に働きます。米国の過去データだけを見て、自分の円ベースの投資結果も同じになると考えるのは危険です。詳細は 為替リスクの基本と考え方 を参照してください。
- Q5. 「過去データで長期は報われた」は将来も同じですか?
- 将来も同じになるとは限りません。過去の実績は将来の運用成果を保証するものではありません。過去データは将来を予言するものではなく、「短期では大きく下がっても長期では回復してきた例が多かった」「だから暴落時に感情だけで売らない材料にする」くらいの使い方が現実的です。
- Q6. 暴落時に売らずに続けるコツはありますか?
- 暴落時に売らずに続けるためには、そもそも暴落しても続けられるリスク量に抑えておくことが重要です。生活防衛資金(生活費の1年分程度)を投資とは別の現金として確保したうえで、無理のない金額を低コストインデックスファンドで積み立てることがひとつの目安になります。怖くなって売ってしまうほど大きな金額を投資に入れていると、長期積立のメリットを活かしにくくなります。
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